金泰均の2010年|海峡を渡ったKOREANスラッガー-05

この5回シリーズは結局、金泰均がNPBで通用するかどうかを占うのが主旨である。
海を渡った先輩KBO戦士の戦績は、どれも芳しいものではない。そこから導かれるのは、金泰均にも過大な期待は禁物だということだ。
 
恐らくは、韓国人と日本人で「野球をする」という基礎的な資質に大差はない。金泰均だって、日本の高校からプロ入りしていれば今頃NPBの主軸を打っていてもおかしくはない。では、なぜKBOにいる選手が日本で活躍するのが難しいのか?それは煎じつめれば韓国での選手の育成方法にあるのだと思う。
良く知られていることだが、韓国で野球チームを持つ高校は50校くらいしかない。野球で身を立てようと考える子供たちは小学校からチームに入り、中学でも野球漬けの毎日を送って高校に入る。高校では、授業は一切ない。全寮制で毎日野球しかしない。父兄も「勉強などしなくていい」と考える人が大部分で、ひたすらプロを目指して練習に明け暮れる。「せめて高校程度の学力はつけさせたい」「大学だけは出させたい」と思う日本とはかなり違う。韓国ではプロ、アマに敷居は全くない。また、国家も野球選手育成を資金的に支援している。韓国の高校球児は「ステートアマ」としてプロに入るのだ。最近は優秀な素材はMLB組織にも送り込まれる。大学や職業チームに進む選手も、プロが大前提だ。
金泰均は天安北一高校時代から、エリート中のエリートだった。もとはミート中心の打者だったが、指導者からフォームを矯正され、長距離打者になる。高校卒業と同時にハンファに入り、そのシーズン後半には主軸に定着し、現在に至る。2008年には本塁打王。
1B守備も良く、出塁率も高い。これはWBCでも実証済みだ。
ただし、WBCでの日本戦では次第に打てなくなる。
日韓5戦での金泰均の打撃成績
    3/8  3打数1安打2打点 1本塁打
    3/10 4打数2安打1打点 1二塁打
    3/18 2打数1安打 2四球
    3/20 3打数無安打 1四球
    3/24 3打数無安打 1四球
金泰均を研究しつくした日本の前に沈黙したのだ。
千葉ロッテに移った金泰均に対しても、NPBの各チームは徹底的に弱点を攻め上げるだろう。金泰均は、その攻勢に対応できず、STATSを下げていくことが予想される。そして自信喪失。つまり、KBOの先輩がたどった道をそのままいく可能性が高い。
憶測でモノを言うのは危険だが、金泰均は(そして多くのKBO選手は)、中学、高校と野球以外のことはほとんど学ばずに大人になったはずである。しかも儒教の国のこととて、指導者の教えに絶対服従だったはずだ。彼が受けた教育は「速い球を思い切り遠くへ打つ打者になれ」と言う一点に集約されていたと思う。
打者の打つ気をそらしたり、かわしたり、弱点を突いたり、様々な作戦を駆使して、強い相手を総合的に負かそうとする日本の野球は、考えの深さにおいて、そして準備の用意周到さにおいて、韓国選手の想像の埒外にあると思う。これが韓国と日本の野球の差でもある。
今年28歳になる金泰均は、学校では決して学ばなかった「野球の知恵」を、持ち前の根性と素頭で、習得することができるだろうか。
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李杋浩は通用するか?|海峡を渡ったKOREANスラッガー-04

BCの韓国で大砲と言えば金泰均と李大浩だったが、李大浩が緩慢な三塁守備をつかれ、内角攻めにもあって調子を落とす中で、李杋浩が次第に中心選手としてクローズアップされていった。3本塁打は金泰均と並び最多である。決勝戦でダルビッシュから打った9回同点タイムリーも強く印象に残った。

李杋浩は、KBOでは金泰均と3、4番を打っている。看板打者2人が抜けるハンファ・イーグルスの苦悩は、MLBに人を出すNPBチームの比ではない。リーグ屈指のクラッチヒッターである李杋浩と、長距離砲金泰均の生え抜きコンビはまさにハンファの看板だった。
 この選手はとにかく休まない。615試合連続出場。そして出塁率も高い。さらに3塁守備も堅実だとされる。一言でいえば「好選手」だ。NPB向けだと言えよう。
ただ、同様に「好選手」の部類だった李 炳圭が、NPBではさっぱりだったのと同様、投手の攻めが変わり、チームの作戦も一変するNPBでどれだけ通用するかわからない。KBO通算打率.265、OPS.818と、もともとの数字が低いだけに大きな期待は出来ないかもしれない。持ち前のクレバーさでNPBに順応してくれればよいと思うが。
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李 炳圭、錆びた5ツール|海峡を渡ったKOREANスラッガー-03

韓国のイチロー、韓国史上最高の大砲というレトリックに倣えば、李 炳圭は、KBO最高の5ツールプレイヤーということになる。特に入団から5年の打率、本塁打、盗塁のレベルの高さはそういうにふさわしい。出塁率はさほど高くなかったが、これは野球観の違いも大きいだろう。
その資質は、落合監督も高く評価し、アレックス・オチョアの後釜として、センターのポジションが用意された。

しかし、NPBでの3年間は、打率.254、本塁打平均9本強、打点平均40弱、盗塁わずかに1、OPS.674、RC27は3.54とすべて期待を大きく下回った。その上守備でも連係プレーから外れるケースも多く、動作も緩慢だった。2003年の負傷からスピードは衰えたといわれるが、それにしても、と言う感がある。率直にいえば、2007、2008年はなぜレギュラーの座に居るのかがわからない打者だった。
実力と言ってしまえばそれまでだが、NPBの野球に全く溶け込めなかったということか。KBOでは、押しも押されもせぬ大選手であり、手本となる選手だったために、プライドが邪魔をしたのではないかとも思う。
「野球は文化だ」としばしば思う。人間としての身体能力にそれほどの差がある訳ではない。むしろ、「野球」と言う地域文化の差が、さまざまなギャップとなっているのだと思う。STATSを見る立場ではこれは興味津津のテーマではあるが、当事者にとっては「異文化」の敷居の高さを痛感していることだろう。
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李 承燁、半島最強の打者|海峡を渡ったKOREANスラッガー-02

日本ではあまり報道されなかったが、2003年の韓国野球は「本塁打記録」に沸いた年になった。李 承燁が、王貞治やローズ、カブレラが持つシーズンNPB最多本塁打記録を抜いて「アジアの本塁打王」になろうとしていたからだ。結局、シーズン最終戦で56本目を打って、李 承燁は“日本野球を抜”いた。

この時点で、李 承燁の視線はMLBへと向いた。期待感を持ってオファーを持った。しかしMLBでは、この記録に懐疑的だった。両翼が98m(実際は95m以下?)で、しかもラッキーゾーンがついたテグ市民球場を本拠とする李承燁の記録は、大幅に割り引いて考えなければならない。MLBは王貞治のNPBの本塁打記録868本も「参考記録」扱いにしているが、同様に李 承燁の記録も、あくまでKBOレベルでの話だと割り切っていたのだ。
LADからわずかにマイナー契約でオファーがあっただけで、MLBの対応は冷たかった。李承燁は、千葉ロッテマリーンズと契約。NPBの選手となる。
 
あくまで、この移籍は「腰かけ」だったはずだ。李承燁は、NPBで抜群の成績をあげてMLBから上々のオファーを得るイメージを抱いていた。しかし野望は早々に潰えた。変化球にきりきり舞いし、焦りに焦る姿だけが目についた。プライドはずたずたになったに違いない。本塁打は14本。連日、彼の後を追いかけてきた韓国の報道陣も、大きく失望したことだろう。
その草創期から、韓国野球は「力対力」の勝負こそがだいご味とされた。できたばかりの韓国野球は長時間にわたる猛烈な練習を行ったが、その大半は野手はバッティング、投手は速球を投げ込むことに費やされた。投手は打者ごとに投球を組み立てることはなく、打者は投手ごとに配球を読むこともなかった。
李 承燁は、そんな伝統の頂点に立つ打者だったのだ。
2年目に李 承燁は30本塁打を打ち、3年目に巨人に移籍、ここで3割、40本、100打点とトップクラスのSTATSを残す。資質は間違いなく卓越していた。このシーズンオフがMLB移籍の最後のチャンスだったが、シーズン終了間際に負傷。以後は故障続きで不本意な成績が続いている。MLBへの挑戦は断念したようである。
李 承燁は、実際に見るとほれぼれするような良い打者である。打席での構えの大きさ、一球を打ちぬく鋭さ、そして1塁での存在感。野球文化の違い、成熟度の違いで、STATSは思うように上がらなかったが、彼がマイナー契約に甘んじてもMLBに渡っていれば、大きく飛躍した可能性もなきにしもあらず、である。恐らくこの打者はNPBよりもMLBの方が、より適応力があったと思えるからだ。
KBOが生んだ最高の長距離打者李 承燁は「時宜を逸した」という悔いが残る選手だ。
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韓国のイチロー、李鍾範|海峡を渡ったKOREANスラッガー-01

今年のNPBで、一番楽しみなのは、WBCで獅子奮迅の働きをした金泰均の姿を見ることができることだ。KBOができて29年。かつてはNPBをリタイアした選手が易々とタイトルを取ったものだが、今ではある部分でNPBを超えたとも言われている。
WBCでの金泰均は、失敗を恐れぬ勇猛さ、そして思い切りのよい打撃で、韓国野球の若々しさを象徴する存在だった。
しかしながら、NPBにやってきたKBO戦士は、必ずしも実力を発揮しているとは言えない。最近の選手のSTATSを紹介しながら、金泰均と同時に移籍する李杋浩の今期の活躍を予想してみたい。
まずは、「韓国のイチロー」と言われた李鍾範
 
彼は建国大学を経てプロ入りしたが、2年目の94年にはKBOスタートの年の白仁天を除けばKBOの最高打率となる.393をマーク。「何でも振り回す」と言われた韓国野球では、シュアなバッティングで知られた。また俊足でも知られ、毎年のように50個以上を記録した。
98年に中日入り。前年、宣銅烈が中日の絶対的なリリーフエースとして君臨していたので、李も通用するものと期待された。「韓国のイチロー」とは、右打者でSSの李にはそぐわない感もあったが、それくらいのSTATSを挙げるものと期待されていた(年齢は李の方が3歳上)。
しかしながら、阪神の川尻哲郎にくらった死球の影響もあって98年はフル出場ができず、以後も結果を出せなかった。また、守備のまずさも指摘され、外野に転向した。
4年目にレギュラーから外れたために韓国に復帰、復帰後はたちまち3割打者に返り咲いた。WBC2006では二塁打を6本も打つ。年齢とともに衰え、一時は打率1割台に低迷したこともあるが、40歳になる今年も現役を続けようとしている。
韓国野球のスピードや緻密さは、少なくとも10年前まではNPBでは通用しなかった。引退後は、NPBで指導者の勉強をしたいという。日韓野球の差を、一番よく知る彼であればこその希望だと言えよう。
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